ガラス管の特性
硬質ガラス管と耐熱ガラス管の耐熱衝撃性
硬質ガラス管と耐熱ガラス管の耐熱衝撃性能は下記のようになります。
耐熱衝撃性 (急熱急冷させた場合) | 軟化点 (ガラスが軟化する温度です) | |
硬質ガラス管 | 80℃ | 785℃ |
耐熱ガラス管 | 120℃ | 820℃前後 |
参考数値です。
耐熱衝撃性の数字は、数字の温度から0℃に急冷(水を掛けるなど)した場合に割れずに済むであろうと考えられる数値です。
また、軟化点の数字はガラスが軟化する温度ですが、外圧を加えた場合は、これ以下でも変形することがあります。
これらの数値は条件や状況により前後する場合があります。
ガラスへの熱のかかり方により、これ以下の温度差でも割れることがあります。
比較的、ガラス全体に均一に熱がかかる方が割れにくいとされております。
線膨張係数(熱膨張係数)と耐熱衝撃温度差(板ガラスの場合)
この表は板ガラスの場合の各種ガラスの耐熱衝撃温度差の比較表です。
一般に、ガラス管は形状的に板ガラスよりも耐熱性能は落ちるといわれております。
パイプ状であるがゆえに、熱がガラス全体に均一にかかりにくいので温度差が発生しやすい為です。
また、熱伝導率の関係で肉厚が厚いほど耐熱性能は落ちます。
硬質ガラスと耐熱ガラス
耐熱衝撃性についてですが、まず、ガラスは温度変化には弱く急に熱したり冷ましたりすると割れる場合があります。
これは、ガラスの熱伝導率が低い為にガラス中に応力が発生、ガラス表面の目に見えない小さなキズが起点となって割れが発生します。
この熱伝導率が低い為に発生する応力による割れを熱衝撃と呼んでいます。
この熱衝撃はある温度からある温度までガラスの温度を急激に変化させた際に発生した応力が、一定の温度差つまり破壊応力を超えた時に発生した割れ、または、発生する応力のことなのです。
この応力は熱伝導率が低い為にガラス中に温度差が生じて発生しているわけですが、この理屈から一般にガラスは肉厚が薄いほど耐熱性能は高くなると言われております。
また、この熱衝撃からガラスを守るための手段として、熱膨張係数を低くする方法があります。
この熱膨張係数はガラスに限らず、さまざまな物質の一定の温度の時の膨張による伸び率を算出する際に使われるもので、これを使ってある想定した条件下での膨張による伸び率を計算することができます。(でもワタクシは理系じゃないのでよくわかんないですが・・・)
その計算に使われている熱膨張係数が、種々のガラスの特性を把握するのに一番便利なので使われております。
この熱膨張係数は「α=32.5」とかのような形で記載されていることもあり、外国製のガラスの特性表なんかにもこのα記載がありましたので、世界的な表記方法でありガラスの性質把握に使われているようです。
で、熱膨張係数が低くなればなるほど、熱による膨張つまり伸び縮みが少なくなるので応力も小さい為に割れにくくなります。
その特性を現すのに先ほどの熱膨張係数が使われております。
硼硅酸ガラスとよばれるガラスは、窓ガラスなどに使われている普通のガラス(ソーダライムガラスとか並質ガラスなどとかよばれたりしています)と較べると膨張係数が小さく、その為、熱に強くなっております。
その熱に強い硼硅酸ガラスは大別すると、膨張係数が50前後の硬質ガラスと32.0~33.0の耐熱ガラスとに分けることができます。
ついでに記載すると、普通のソーダライム系のガラスは膨張率がα=90~100の間くらいのようです。
硬質ガラス管は膨張係数50前後と一般的なソーダ質のガラスと較べると膨張係数が小さく、また、エアーバーナーで加工できる上限でもあります。エアーバーナーを使う加工の場合、ソーダー質ガラスと較べると膨張係数が低い分歪割れをおこし難いので、ソーダー質ガラスに慣れた方には特におすすめです。ソーダー質ガラスと較べるとその名前の通り硬いので、加工には少々時間がかかります。
日本においてはNEG(日本電気硝子)製のもが寸法精度やアワスジ・ブツ・ミャクリなどの品質面において優れており、一般的になっておりますが、工業用用途の側面が強く一般にはあまり馴染みがないガラス管といえます。しかし、いろいろなところで使用されているので、実は一番みなさんの身近なところに使われているガラス管でもあるのです。ガラス管の材料そのものは一般にはほとんど流通していません。
NEG(日本電気硝子)製BC(理化学用硬質ガラス)管の膨張係数はα=52.0となっております。
耐熱ガラスはCODE7740の規格に基づく成分組成や耐熱衝撃性を有しております。
日本においてはATG旭テクノグラス(IWAKI)のパイレックス(PYREX)の名前でおなじみとなっておりますが、パイレックス(PYREX)は商品名で、もともと米国のコーニング社の商品名です。(そのため、本当は登録商標マークの(R)とか®とかを記載しておかないといけないわけですが、めんどくさいし有名だから勝手に割愛させていただきます。)
ATG(旭テクノグラス)はそのライセンスを受けて生産されているわけです。もともとIWAKIの名で岩城硝子だったんですが東芝硝子と合併してATG(旭テクノグラス)となり、最近はAGC(旭硝子)の100%出資子会社となったようです。
話しは戻って、それに対して、パイレックスと同等の耐熱性能を有するのがドイツ・ショット(SCHOTT)社のデュラン(DURAN)です。
もともとこのcode7740のガラスを開発したのは、このSCHOTT(ショット)社であり、SCHOTT(ショット)は世界的なガラスメーカーのパイオニアであります。デュラン(DURAN)の寸法精度やアワスジ・ブツなどの品質面はパイレックス(PYREX)よりもこのSCHOTT(ショット)社のものの方が優れているのですが、日本においては硬質ガラス管はNEG製が、耐熱ガラス管はATG製がシェアを占めており、SCHOTT(ショット)社製のものは輸入に時間がかかるなどの理由で敬遠される傾向があります。最近は以前よりも入手しやすくなってはきております。
膨張係数は、
パイレックス(PYREX)がα=32.5
デュラン(DURAN)がα=33.0
となっております。
デュラン(DURAN)とパイレックス(PYREX)は接合可能です。
その他の耐熱ガラスはかなり特殊用途向けになります。
例の一つとして、結晶化ガラスとゆうものがあります。
これは、ガラス中に熱がかかると縮む性質の物質を練りこんだもので、膨張しようとするガラスを、収縮する性質で膨張を吸収し、結果、膨張率を小さくしてやるものです。
例えば、
=が5個で■が5個あったとします。
=====■■■■■
合計で10個です。
熱がかかり=が1個分膨張し、■が4個分に収縮した場合、
======■■■■
となり、合計は10個でトータルとしては増えておらず、膨張率は0となるわけです。
実際には、膨張率が0とゆうことはないようですが、それでもパイレックス(PYREX)やDURAN(デュラン)などの耐熱ガラスに較べると極端に膨張率が小さくなっております。
各メーカー様々な種類の結晶化ガラスを開発されておられ、色々なところに使われております。
このガラスの特徴は、膨張係数が極端に小さくバイコールや石英に近い耐熱性をもっていながら、通常のガラスと同じような加工性をもっている点です。ガラスに不透明の色が付いている事もあります。
結晶化ガラスのガラス管は聞いたことがありませんので、現在のところおそらくないと思われます。
NEG製BC(硬質ガラス)管の主な特徴
工業用に大量にお使いになられる場合は、NEG製のBC管が経済的でよく使われております。
このNEG製の硬質ガラス管ですが、上の表にあるように耐熱ガラス管との性能の差はそう大きくありません。
ですので、そう神経質にならない場合などはこちらのBC管もおすすめになります。
ATG製PYREX、SCHOTT製DURAN 耐熱ガラス管の特徴
code7740の耐熱ガラス管は、耐熱ガラスの名が指し示すように通常のガラスの中では最高の耐熱性能を有しており、これ以上の耐熱性能を有するガラスは石英ガラスやバイコールガラスなどになり、ガラスの硬さもより硬くなるので加工も難しいものとなり、かなり特殊なものとなります。
この耐熱ガラスの加工には酸素バーナーが必要です。
耐熱ガラス管は、耐熱性が必要な場合はモチロン、数量が少量の場合にもパイレックスやDURANガラス管が材料調達の面で小回りがきくで、当社では少量品の場合はパイレックスまたはDURANを主に使用いたしております。
パイレックス規格表はこちらです。
デュラン規格表はこちらです。